事の始まり
5月18日
18日夜、中国の中央銀行である中国人民銀行の発表によると、中国の3大取締機関が連名で『仮想通貨の取引における投機的売買リスク防止についての公示』を行った。
最近、仮想通貨の価格が乱高下しており、仮想通貨の取引における投機的売買による相場の反発がみられ、市民の財産の安全を深刻に侵害し、経済と金融の正常な秩序を乱している。(抜粋)
公示の要点は以下の通り。
1、仮想通貨はバーチャル商品であり貨幣ではない
法で定められた貨幣の要件を満たさないため、貨幣として市場で流通すべきではないという見解だ。
法定貨幣と仮想通貨、また仮想通貨同士を交換する業務、精算機関(CCP)として仮想通貨を売買すること、仮想通貨の取引に情報の仲介および値付けサービスを提供すること、トークン発行による資金調達および仮想通貨の金融派生商品の取引などの活動は、関連法令に違反し、違法な資金調達、違法な証券発行、トークンやクーポンの違法な販売などの犯罪行為の疑いがある。
2、禁止された具体的な業務
金融機関、決済機関など(3大取締機関の)加盟機関がしてはならないことは、以下を含むがこれに限らない
顧客に仮想通貨の登記、取引、決済、決算などのサービスを提供すること
仮想通貨の使用受付、仮想通貨を決済手段として用いること
仮想通貨と人民元および外貨との交換業務を展開すること
仮想通貨の貯蓄、委託保管、抵当などの業務を展開すること
仮想通貨と関係のある金融商品を発行すること
信託、基金等へ投資する際に仮想通貨を投資対象とすること
5月21日
中国国務院の定例会議で「ビットコインの採掘および取引行為の取り締まり」について触れられる。
18日の3大協会による公示では採掘についての記載はなかったが、ここでビットコインの採掘も取締対象であると判明。
この記事を読んでいる方には言うまでもないとは思うが、国務院の通達が出てから10分以内にビットコインの相場は大暴落、今も下落の傾向が続いている。(正直ガッキーショックより法規制の影響のほうが大きいと筆者は考えている……。)
現地金融紙の報道
国際金融報は3大取締機関のうちの1つである中国互联网金融协会オンブズマンのコメントを紹介し、「今回の通達は中国国内の住民が頻繁に仮想通貨取引を行っているインフラを断ち切り、仮想通貨のトレードにポジティブな影響を与えるだろう」と報道している。
The Time Weekly(時代週報)も上記オンブズマンの「仮想通貨のプールの水量が減少し、水があふれるリスクが減少するだろう」というコメントを引用し、「伝統的金融機関が参加しない状況下では仮想通貨の技術的ハードルが引き上げられ、取引に参入できる人数に直接的な影響をもたらす」と述べている。
要するに、専門知識に乏しい者が仮想通貨の取引に参入し、乱高下する相場の中で資産を失うことを防止することこそが、これまで当局が仮想通貨を規制してきた最大の理由であるという姿勢だ。しかし、これらの「市民に優しい」報道とは別に、少し毛色の変わった報道も存在する。
新浪財経は中国地方金融研究院および武漢科技大学金融証券研究所の専門家に取材し、「国家の信用保証がないことが仮想通貨の最大のリスクである」と評し、また「将来的に仮想通貨を規制する国家が増えた後の末路は、ゲーム内コインあるいは賭博に使用するカードのような用途だろう」と締めくくっている。
政府や金融機関のような中央管理者を必要としない分散型の特性と高いセキュリティこそがビットコインをはじめとする仮想通貨の強みであるにもかかわらず、それをリスクと評価する姿勢には筆者はあまり同意できない。相場の乱高下をもたらしているのは今回の通告をはじめとする各国の政策、および仮想通貨を決済手段として受け入れている企業の施策であって、分散型システムそのものではないはずだ。
法律家の見解
ところが、北京市盈科法律事務所の郭志浩弁護士によると、「国務院会議で触れられたビットコイン関連の内容については、完全なる封鎖とはいえない」という。
1、中国の政府機関にとって「ビットコイン」は仮想通貨の代名詞
本件に関する通達や報道を読み解くうえで重要なのが、「比特币(ビットコイン)」という単語の記載が単に$BTCを意味しているわけではないということ。他のアルトコインも当然規制の視野に入っているため、ビットコインの取引および採掘だけを停止してアルトコインのみを取り扱えば大丈夫という考えは正しいとはいえない。
2、「ビットコイン」が今回の会議で言及された意義
ただ、今回の国務院金融安定発展委員会の会議はあくまで金融の安定維持が主要なテーマであり、ビットコインに言及されたのは会議全体の中のごく一部分なのだ。今後の政策の傾向として資金が仮想通貨市場に流れることを推奨しないのは確実だが、現時点では公示のみで具体的な規制方法を示した条例は一切ないため、「完全な封鎖」とはいえないと考える。
完全な法律とは規制されるべき行為の条件、行為の方法、法律違反の際に負う罰則を含むものであり、マイニングと正常なコンピュータの作動の区別方法、当該プログラムが実行された時間の長さ等が法律で定められない限りは現実的な取り締まりはできないだろうと郭弁護士は述べている。
3、規制対象について
また、今回の取り締まりの主な対象は仮想通貨関連事業を行う組織、機関および企業であり、個人ではないと郭弁護士は解釈している。国務院の通達が下りてから多数の売りが発生したが、現時点で中国国内にいる個人が仮想通貨を保持しているだけで処罰されることはないだろう。
ソース:テンセントニュース